小豆島の寒霞溪は景勝地として知られ、瀬戸内海国立公園のなかでも人気の観光地である。かつて旅行で来たことはあったものの、一度歩いて渓谷美を楽しみたいと思っていた。「小豆島に山があるの?」というのが一般的な反応だが、希望者が何人も現れたので計画する。 寒霞溪ロープウェイの紅雲駅から「表十二景」を登って三笠山に達し、阿豆枳(あずき)島神社が祀られた星ヶ城に登頂。往路を山頂駅前まで戻って、そのあと「裏八景」を下山して安田の宿まで歩くよう設定した。 道はすべて遊歩道が整備され、子ども連れのハイキングでも楽しめそうだ。取付地点では、紅葉の背後に峨々たる岩場が姿を覗かせている。ロープウェイの駅に行かなかったので、「表十二景」の通天窓(第一景)は見られなかったが、紅雲亭から順に景色を愛でながら登っていく。途中では、十二景に入らない岩峰が聳えていたり、逆に樹木が成長して望めなかったりするが、1時間ほどで第十二景の四望頂に着いた。三笠山の山頂広場には四等三角点があり、なおも照葉樹林の尾根を東に向かう。最高峰の星ヶ城(東峰)は城跡で、さすがに周囲がよく見渡せる。ここには一等三角点が設置されていた。 「裏八景」の石畳を下り、松茸岩から内海湾を見下ろす。表に比べて地味で規模も小さいなと思いながら降りていくと、前方に石のアーチが突然現れた。穴の向こうには紅葉の木々が陽を受けて輝き、すぐ下には懸崖造りの大師洞が岩場に建っている。特徴的な景観が急展開で次々と現れた。構成要素としては、裏のほうが優れているように感じる。いずれにせよ、火山性の安山岩や集塊岩(火山角礫岩)などの特性がよく分かる地形で、寒霞溪のよさを体感できるコースとしてお勧めだ(2018.12.1)。 |