利尻島はアイヌ語で「高い島」(リイシリ)を表わす。入山する沓形(クツカンタ)は「岩の多いその上のところ」であり、下山した鴛泊(オスットマリ)は「根元の入江」だという(解説=利尻富士町教育委員会)。地名の多くが表音を漢字に当てはめたため、文字から意味を読み取ることは難しい。 そんな環境下で、信仰あるいは人々に告知のため設けられた標石は漢字表記ばかりだ。既にアイヌ語が使われなくなった状況を証明しているともいえる。行動中に見たものを幾つか取り上げるが、設置年代が明確なものは比較的新しいものである。例外は山頂の「□天堅嶽」(□てんけんだけ)で意味や時代が不明だ。傍に二等三角点の盤石が残る(利尻絶頂)。 長官山の歌碑は「利尻山 登り登れば/雲湧きて 谿間遥けく/駒鳥乃鳴く 幡川詠」と彫られている(/=改行)。幡川は当時の北海道庁長官(現在の知事に相当)=佐上信一の雅号。近くには一等三角点が埋設されている(本点=利尻山)。ほかに、梵字が刻まれた巨石や「薬師如來」の標石が利尻岳山小屋の近くにある(藥師山)。 入植者の歴史とともにある修行の痕跡が残るものの、いつ頃から利尻山が登られるようになったのかは不明である。また、それより古い「リイシリ」に結びつく資料が山中に埋もれていないものだろうか。山体の崩落が激しいため、早い調査が待たれる。 下はペシ岬にある標石(補点=鴛泊)で、この島には一等三角点が二つあった(2018.7.11)。 |