高校の山岳部で、夏のプレ合宿として広河原から早稲谷を遡り、山頂を踏んだあとカズラ谷を下って由良川に達した。その後は本流を長治谷作業所から三国峠に向かい、生杉から針畑川に沿って葛川梅ノ木まで歩いた。50年前のことである。 山頂や尾根筋はその後も何度か行く機会があったものの、私にとって早稲谷は一度きりの記録である。来月に「京都再発見」のクラスで出かける予定をしているため、念のため確認しておきたかった。というのも、近年のインターネットの記録を見ると気になる記述や写真があるからだ。ここ数年の台風などによる災害も確認する必要があった。 そこで、連休前半の好天の日に出町柳駅前から広河原行のバスに乗車した。さすがに多くの人出があったものの、「下の町」のバス停で下車したのは私だけで、静かな山と季節を感じる一日が始まった。 「松上げ」が行なわれる「燈籠木(とろき)場」を左手に見て上流をめざす。最後の民家を過ぎると植林地の中を作業林道が奥へつづく。往時は砂防堰堤や林道がなく、流れに足を浸して進んだ。傾斜が急になるところに滝が懸かっていて、先輩らは見事に落口まで登ってしまった。駆け出しの1年生にとっては難所で、なかなか攻略できなかった印象が残っている。そして源頭になるとお決まりの藪漕ぎが待っていた。濃密なクマザサやネマガリタケを掻き分ける技術(「ジャンジャン」と呼ぶ)は当時に鍛えられたもので、地形図(五万分の一)を読んで三角点に到達する喜びもこの時代に養われた。 現在はゲートのある594m地点から840mまで折り返しながら上る林道(跡)がつづき、山頂から南へ下る支尾根に道が付いている。歩くには何ら支障のないルートで、バス停から山頂まで1時間20分で達することができた。 早稲谷が使えないことを想定して、少し距離があるものの久多峠まで稜線を歩くことも考えた。したがって、そのルートも下見する。展望に優れる地点が数箇所あった。途中のコウンド山・フカンド山を確認し、小野村割岳から2時間で行くことができた。道中には見事な台杉を何本も確認したが、注意すべき尾根の分岐が何箇所かあることと標高差は小さいもののけっこうアップダウンが連続するため、コースとして難があることも判明した。 帰途は葛川梅ノ木からバスで堅田へ出るべく、久多から奥山川に沿って時速6キロ強のペースで歩く。日光が降り注ぐ青葉若葉の風景が美しかった(2018.4.29)。 |