1992年に刊行された『小笠原の自然――東洋のガラパゴス』(古今書院)で行きたいと思ってから20年以上が過ぎた。小笠原諸島は東京から約1,000キロメートル離れた太平洋上にあって、1968年に米軍統治から日本へ返還されたのち、国立公園(1972年)と世界自然遺産(2011年)の指定を受け現在に至る。 島の歴史は初めに欧米系の人々や太平洋諸島民が住み、日本領土として認められたのは1876(明治9)年である。その後は移民が多く、最盛期には7,000人以上が暮らしていたという。旧日本軍の基地として、島民の強制疎開(1944年)以後は軍関係者だけになった。 したがって、島のあらゆる箇所で人々の痕跡があり、けっして手付かずの自然が残っているわけではない。ただ、これまで一度も大陸とつながったことがない島々だけに、独自の進化を遂げた生きものが環境に適応して変化してきたという独自性が貴重なのである。そのすばらしい価値の一端を体感したかった。 せっかくなので長期の日程を考えたが、4月から新年度の予定が入っているため、年度末の「おがさわら丸」の一航海(6日間)で計画する。認定ガイドの同行が必要なエリアは、残念ながら割愛せざるをえなかった。結果として登った山は8座。この時期の自然を欲張って味わおうと長時間の行動をしたが、一人ゆえの柔軟な対応で大満足の山旅になった。父島二見港近くのビジターセンターで、自然・歴史・民俗・文化のアウトラインを掴んでおくと充実度が違ってくる。船が入港中は夜まで開館しており、親切な対応が嬉しい(2018.3.23〜3.24)。 |