六甲の高取山は、再度山や保久良山と並ぶ毎日登山で賑わう山だ。参道に点在する茶屋がその歴史を伝えており、今も四軒が営業しているという。長田の市街地からも近く、山中に祀られた多くの神が人々から尊崇を集めてきたことが窺える。石が並ぶ稲荷山(京都市伏見区)さながらの光景は、「お塚めぐり」といってもよいほどである。週日の昼間でも次々と山をめざす人たちの姿があり、その身軽な動きが日常の生活と深く結びついていることを示している。 長田神社にある高取山(神撫山)遥拝所を出発し、苅藻川(宮川)畔で山容をまず確認した。長田小学校の北側にある登拝口から登る参道で高取神社に達し、荒熊神社で三角点を確認したあと本道で西代に下った。どちらも距離は十八丁(約2キロ)で、道中の丁石や鳥居をいくつも目にすることができた。山中は樹林もすばらしく気持ちよく歩けたものの、信仰が途絶えた神蹟と住宅に埋め尽くされた区域では、無残にも荒れ果てた状況を見ることにもなった。
身近な自然と対話できる高取山のような環境は、現代社会ではますます求められるはずである。神や神社の役割も変化するだろうし、全山を包む「気のようなもの」(力)が再び人々の心の拠り所になるのではないだろうかと思われた(2017.7.3)。 |