雪山をめざすトレーニングの3回目は、安全を担保する技術の習得である。晴天に恵まれた伊吹山で行なった。先月までアイゼンでの歩行とピッケルの使い方を習得したが、滑らないことがなによりも大事であると伝えてきたし、風の怖さも強調してきた。 だが、最終的に自分の体を守る方法が身に付いていないと、アクシデントを起こした場合に対処できなくなる。最後の砦として、滑落停止技術はぜひマスターしておきたい。我々の若い頃は山岳会も熱心に取り組んでいたが、現在は滑落しないことに重点が移って顧みられることが少ない。インターネットでは、滑落して生還できたことが武勇伝のように語られてもいる。こうした風潮は恐い。 六合目の上部で、最初は雪面に寝転んで動作の順番を説明し、それぞれのポイントを実際に示しながら体験してもらった。みなさん初めはぎこちない体の動きだったが、何度も練習するうちに反応もよくなってくる。次に七合目付近の傾斜がある斜面でザックを背負って練習した。足から滑落するケースだけでなく、転倒して頭から落ちる場合も想定した。いずれにしても、滑った直後に体勢ができて体重がピックにかからなくてはいけない。また、ザラメ状の雪でピッケルを使わずに止める方法も練習する。 最後に耐風姿勢を練習した。風の強弱(呼吸)を早く察知することが肝心だが、この日は微風だったのでホイッスルを吹いて姿勢をとるタイミングにする。足とピッケルの三点支持で体勢を低くすることと、重心をその中心に持ってくることを解説した。とくに反応が遅れる下山時の対処に重点を置いた。これで、最低限の積雪期登山技術がマスターできたと思う(2017.3.5)。 |