猪名川の源頭にある大野山は、天文台があることで知られ、眺望の良い山としても有名である。いつだったか、ここに丹波と摂津の国界石が存在することを知って、ぜひ行ってみたいものと思っていた。今回は登山の講座で訪れたが、さいわいにも秋の好天に恵まれ、周囲の山々の展望とともに楽しむことができた。 国や郡・村の境界は、一般的に尾根や河川など明らかに自然な線引きがなされるが、経済や生活に深くかかわる租税や入会権などがこじらせる原因になっている。山林や原野の所属は、山麓に暮らす人々にとって利害が直接跳ね返る問題で、どこも妥協はできなかった。江戸時代に多く発生した山論(山における境界争論)は、幕府が乗り出さなければ解決できないほど深刻で、明治になって決着したものも多い。そのほか、境界が未決定のまま現在まで持ち越されている地域もある。 2.5万図「福住」を見ると、大野山の山頂西側で篠山市と猪名川町の境界が不自然な線で描かれている。ここは、丹波国多紀郡後川村と摂津国川辺郡柏原村・有馬郡小柿村の主張が交錯していた。岩めぐりのコースには、元禄十一(1698)年に京都奉行所が下した境界を刻んだ岩石(「界 ○○」石)が多く現存する(写真のほか、十四番から十九番)
。案内板によると三十五番まであるようだ。また、ユニークな形状から名付けられた呼称の岩もあって、みんなであれこれ批評しながら歩いた(2016.11.5)。 |