一般に「北山」と称している京都市北部の山々。市街地から見える山なみは狭義の北山だが、日本海側まで含めた山域も北山として捉えてきた。地勢的には丹波高地とされ、我々の感覚からすれば「丹波高原」という括りで馴染んできたと思う。中学生の頃に『京都北山と丹波高原(アルパイン・ガイド45)』(森本次男著/山と溪谷社/1965)に出会ったのがきっかけで、その情緒的なイメージを抱きつづけてきたからかもしれない。仮称ながら「丹波高原」のつく名称は、個人的にはよいネーミングだと感じる。 今春に開かれる予定の中央環境審議会(環境省)で答申され、上桂川(淀川水系桂川上流)と由良川中流〜上流域が国定公園に指定・告示される見通しだという。京都府に在住の方ならご存じかもしれないが、対象地域外に住む者にはこれまで何のニュースも伝わって来なかった。一般から意見を聞く期間も既に過ぎ、あとは中央環境審議会の手続きを待つだけのようである。 「スギやブナなどの原生的な自然林及びそれに隣接する比較的自然性の高い二次林により形成される森林生態系、希少かつ多様な魚類を育む河川生態系等の多様な生態系」が指定理由で、テーマは「森の京都〜森・川・里に守り継ぐ自然と文化」だという。原生的な自然林の第1種特別地域から、二次林ながら比較的自然性の高い地形・森林・文化的景観を有する第2種特別地域、さらに林業が営まれる第3種特別地域と普通地域に分けて保護がはかられるという。公園面積は68,851ha(陸域)で、第1種特別地域の2,485haは芦生研究林の由良川本流周辺にあたる。花脊・八丁平・大悲山・芦生・日吉ダムにある鳥獣保護区は重複指定になる。 公園内の施設(園地)と道路(道)計画は上の図版に示されているが、気になるのは佐々里峠・八丁川・品谷山・廃村八丁、小野村割岳、桑谷山・久多越、鎌倉山、峰床山・八丁平、皆子山、城丹国境尾根、白尾山・鉢ヶ峰、若丹国境尾根、君尾山などの整備の方法である。どれも評価の高い自然と山岳だけに、その保全がどこまではかられるかが問われる。また、福井県側や滋賀県大津市と高島市に跨がる山域で、国定公園に隣接する環境をどう評価し一体感をもたせるかも課題になろう。行政界で国定公園を区切る内容には疑問が残る。 「山の日」の施行、北陸新幹線のルート問題(敦賀〜大阪)も絡んで、国定公園の動向は北山をめぐる今年の重要なテーマになる。 【その後の動向】2016年2月23日に開かれた国の中央環境審議会自然環境部会で承認され国に答申。3月下旬に告示される。 |