上の地形図を見て興味を覚えないだろうか。長く延びる谷の源頭に小さな凹地があり(地図記号の矢印)、記された等高線から現地の状況をイメージしてほしい。実際の山行で通るだけなら、方向さえ間違わなければ気にならないほどの地形である。だが、尾根のつながり方や水の流れる方向を考えると、この目でぜひ確かめたいと思うのではないか。 下の図は、推理する要素を分かりやすくするため記号化した。左図は等高線の数値を加え、白抜き丸数字1と白抜き丸数字2の間(距離=約250m)に白抜き丸数字3の閉じた等高線一本(10m)が描かれている。凹地でなければ、それほど興味を覚える地形ではない。池や湿地が発達している様子は地形図からはうかがえないが、水溜まりぐらいは見られるかもしれないと感じた。ここに溜まる水が溢れるとすれば、白抜き丸数字1の方へ流れるか白抜き丸数字2の方かどちらだろう。その痕跡が認められるかも確かめたい。右図はAとBのピークから尾根がどのようにつながっているかである。二つの尾根(丸数字1と丸数字2)が考えられるが、等高線の形状からなんとなく判る気もする。もうひとつの興味は谷底(谷床)と鞍部の標高差である。地形図上から最大値9.99mの差が考えられる。しかし、周囲の傾斜から推し量ればほぼ平坦地ということもありうる。 写真は現地の景観である。尾根は左図の「ア」ではなく「イ」で、右図の丸数字2のようにつながっていた。尾根と谷の標高差は、目測で「イ」が約3m。「ア」は1m未満である。本流と支流という見方からすれば、北へ下る谷が直線的なのに対し、南西へ下る谷は上部で二分する。しかも、本流は左又だ(集水面積が広く、水源の標高が高い)。左図「イ」が源頭の谷は支流である。地形は考えていたものとほぼ合っていた。 地形図を理解し読図力を高めるには、こうした場面が大いに役立つ。複雑な地形が広がる北山はおもしろく、楽しみの材料をいろいろ提供してくれる。 |