愛媛県の大三島は、「瀬戸内しまなみ海道」にある最大の島で、最高峰は中央部に位置する鷲ヶ頭(わしがとう)山である。西麓の大山祇(おおやまづみ)神社の神体山で、安神(あんじん)山を経てよい道がつづく。 大三島町宮浦にある大山祇神社は伊予国一ノ宮として知られ、古くから崇敬を集めてきた。源氏・平氏をはじめ武将たちが奉納した武具が残り、多くは国宝や重要文化財の指定を受けている(全国の8割を所蔵)。境内のクスノキ群は天然記念物で、巨樹が何本も認められる。創建者である乎知命(おちのみこと)お手植えの木は玉垣で囲まれ、樹齢は2600年を超えると説明板にあった。 本殿の手前から宝物館の前を登山口に向かい、入日ノ滝経由の道を右に分けると急な登りになる。展望台で街や港を眺め、石鎚大神が祀られた安神山に達するとさらに眺望がよくなる。島々が織りなす瀬戸内の風景が広がっていた。遠くは、石鎚山や瓶ヶ森・笹ヶ峰がスカイラインを描く。行く手の烏帽子岩は鋭く魅力的だ。 露岩帯を過ぎると緩やかな尾根道になり、入日ノ滝からくる道が合流して道路に出た。もう一段上で迂回してきた道路と再び出合い、コンクリートと石で造られた急登をこなすと、電波塔が建つ鷲ヶ頭山の頂上に着く。北東には広島県の生口(いくち)島が多々羅(たたら)大橋でつながり、西は大崎上島(広島県)が近い。時間があるので、ゆっくり瀬戸内の風景に浸る。南西側には、この島の南部にある薬師山が大きな山容を横たえていた。 往路を戻って神社の境内に入り、鎌倉時代の宝篋印塔や神輿倉を見てから奥ノ院(元神宮寺)に向かう。入口にあたる「生樹の御門」(いききのごもん・いききのもん)と呼ぶ樹齢3000年のクスノキが、辺りを包み込むようなスケールで迫ってきた(2025.12.6)。 |