笹ヶ峰は愛媛県西条市と高知県いの町(本川地区)にまたがり、石鎚山脈にある優美なササ原の山である。南東側は吉野川水系の谷が主脈まで入り込み、瀬戸内側は加茂川などの険しい谷を擁している。ただ、中腹までは植林地も多く林道が各所に敷設される。山上の自然環境保全地域では冷温帯から亜寒帯の自然林が広がり、シコクシラベやコメツツジ群落が美しい。 国道194号の旧寒風山トンネル南口(桑瀬峠登山口)から桑瀬峠に登り、寒風山を経て頂上に達した。寒風山の南側にあるピーク(1,630m)は露岩が目立ち、登山道は東斜面を絡みながら進む。岩場には梯子やフィックスロープがあって、ルートはよく整備されている。寒風山は霧氷で知られ、冬の季節風が吹き抜けるピークである。眺望がよく、あす登る予定の瓶ヶ森(かめがもり)がひときわ大きい。冠山・平家平一帯の稜線も印象的だ。 西側の斜面をトラバースしながら高度を上げると、丸山荘からの道が合流して一等三角点(点名=笹ヶ峰)の頂上に着いた。瓶ヶ森の背後に石鎚山が姿を現す。石鎚蔵王権現の小祠があった。 ササが茂る北西の斜面を慎重に降りると、標高1,600mぐらいから樹林帯に変わった。ミズナラやブナの巨樹も多い。苔に包まれた転石と黄葉する木々が庭園のような雰囲気を醸し出す。 老朽化して利用できない丸山荘の前で休憩し、美しい紅葉を愛でながら笹ヶ峰林道の登山口に向かう。途中にある宿(しゅく)は、藤之石地区の吉居(よしい)から別子(べっし)銅山へ木炭を運ぶ要所だったらしい。現在は成長したスギに覆われていた。石段のある道を降ると、吉居川源流は滝やナメが連続する。間に砂防堰堤があるものの、なかなか魅力ある渓相を示していた。 登山口から国道194号が出合う下津池(しもついけ)まで下ると、加茂川を渡る止呂(とろ)橋付近の景観が見事だ(止呂峡)。橋上から、少し早い紅葉美を楽しむ。下津池・風透(かざすき)は、山手の緩斜地に開かれた棚田の風景で知られる。 加茂川流域には、かつて銅鉱山が各所にあった。なかでも、アンチモンを採掘した市之川鉱山は、日本刀のような大きく美しい輝安鉱の結晶で世界的によく知られる(2025.11.7)。 |