伯耆(ほうき)大山〔だいせん=弥山(みせん)〕から北東につづく稜線に、鋭い山容の三鈷峰(さんこほう)がある。若い頃は縦走できたが、激しい崩落で最高峰の剣ヶ峰や天狗ヶ峰に登ることはできなくなった。ただ、三鈷峰とお花畑が広がるユートピアは登れるので、大神山(おおがみやま)神社奥宮から宝珠(ほうじゅ)尾根を往復する計画にした。 大山寺(だいせんじ)唯一の宿坊(観證院・山楽荘)に宿泊して、午前8時に出発。角磐山(かくばんざん)大山寺は前日に参拝したので、石畳になった神社の参道を登る。神門をくぐると、権現造の大きな社殿に着いた。 行者谷への登山道を進み、宝珠尾根への分岐から急坂を登る。尾根の鞍部を、下から順に下宝珠越・中宝珠越・上宝珠越と呼ぶが、標高1,200mぐらいから岩場が現れる。中宝珠では、樹木に遮られない三鈷峰と初めて対面できた。 スラブ状の露岩や岩稜をこなすと、弓ヶ浜や中海・宍道(しんじ)湖が望めるようになった。山麓の孝霊(こうれい)山は「山」のような姿が特徴的だ。歩きにくい剣谷の源頭をトラバースして尾根に出ると、三鈷峰のピークがすぐ近くにあった。 露岩の細い道を、風に注意しながら頂上へ達する。青空も覗くものの、雲が次々とやってきて遠くはスッキリ望むことができない。強い南西風に乗って、鳥取・岡山の県境稜線は頻繁に黒い雲が覆う。烏ヶ山(からすがせん)はかろうじてピークを見せる時もあった。 象ヶ鼻(ぞうがはな)を往復して、ユートピア避難小屋で昼食時間にする。慎重に宝珠尾根を降り、宿坊で休憩していると雨が降り始めた。この日は風雨の天気予報だったが、午後2時過ぎまで降らずによく持ってくれた。鳥取県立大山自然歴史館でこの季節の花や修験の歴史に接してから、三朝(みささ)温泉へ移動する(2025.10.18)。 |