日曜日のトレッキング講座で大峰山脈の観音峯(観ノ峰)に出かけた。山上(さんじょう)川と川迫〔こうせ(い)〕川に挟まれた支脈の末端にあり、稲村(いなむら)ヶ岳の西面を間近に眺めることができる。 虻(あぶ)峠のトンネル東口にある登山口から吊橋を渡って登り始める。バス停からの旧道(現在は通行止め)に合流すると観音ノ水が湧いていた。植林地を進むと玉八大権現の碑がある平地(観音平)に出る。石段の上部に「お歌石」があり、古い歌碑は風化して読めないので再刻したとある。 「よしの山 花ぞちるらん天の川 くものつつみをくずすしらなみ」〔伝:護良(もりなが)親王〕 これは、藤原(ふじわらの)俊成(としなり・しゅんぜい)の家集〔『長秋詠藻』(ちょうしゅうえいそう)〕に出ているものが本歌らしい。 大塔(おおとうの)宮護良親王の伝説を残す洞窟が近くにあるものの、大正時代はこの一帯で鉄鉱石を採掘していた。当時は下市(しもいち)まで索道で運んだという。登山道脇には今も遺構が残る。 尾根に出ると、ほどなく観音峯展望台へ着いた。遠く高野山や金剛山などが姿を見せている。カヤトの原を過ぎると、伐採作業のための林道を二度横切って、自然林に包まれた観音峯(三等三角点。点名=観音峰)のピークに立つ。地元では「八窪(はちくぼ)の三角点」と呼ばれる。 稲村ヶ岳の登山道が通る法力(ほうりき)峠へ、上り下りを繰り返すと三ツ塚のピークに出た。直前の南面からは、西日を受ける大日山・稲村ヶ岳が近い。残念ながら、弥仙の山頂は雲に覆われたままだが、標高1,700m級の頂仙岳(朝鮮岳)は三角形のフォルムをはっきり見せていた。 岩混じりの細い尾根を通って峠に降り、母公(ははこ)堂を経て洞川(どろがわ)の町へ下山する。
下降途中に、一人が転倒して頭を負傷する事態になった。来訪者の休憩できる場がないので、車の到着まで休ませてもらえないかと『洞川温泉ビジターセンター』まで歩く。事情を話したものの、入館を拒否され屋外で待つ羽目になった。これまで、旅館(宿坊)などで温かい印象を抱いてきた天川(てんかわ)村だが、かたくなな対応で一気にイメージが覆る。観光案内所も兼ねているのに、有料の温泉施設だけなら「ビジターセンター」と名乗るべきではない(2025.9.21)。 |