越知(おち)町にある横倉(よこぐら)山へ登る前後に、植物分類学者=牧野富太郎(まきの とみたろう)とかかわる場所を訪ねた。
ひとつは、生家のある佐川(さかわ)町で、若い頃から馴染みの銘酒「司牡丹」がある。その酒蔵付近を歩いて牧野公園に向かった。町の南側に古城(こじょう)山と呼ばれる佐川城跡があって、一帯で多くの花を見ることができる。元は「奥ノ土居」と称したらしい。中腹に分骨された墓があり、周囲はバイカオウレンに覆われていた。今は紫と赤いヤマシャクヤク(ベニバナヤマシャクヤク?)の種子が目立つ。 地域の人々が管理・運営する公園だが、家屋の周りも住民が花を植えるなどして「まちまるごと植物園」をめざしているという。町民の誇りにつながるすばらしい活動で、落ち着いた町並みが心地よい。金峰(きんぷ)神社と「岸屋」にも立ち寄った。 もうひとつは、高知県立牧野植物園で高知市南東部の五台山にある。四国霊場第三十一番札所の竹林寺境内の一部を利用して開設された。 正門を入ると、「土佐の植物生態園」を観察できるよう通路が配置され、山地や丘陵・水辺・海岸などを順に体感できる。途中には、この日に見られる花の一覧パネルが置かれ、咲いている花が一目瞭然。初めての者には嬉しい情報でありがたい。 エントランスから本館・展示館・温室へと順路をたどり、石仏が祀られた巡礼道にも足を踏み入れる。多くの入園者があったものの、南端の結網山(けつもうざん)では他に人の姿はなかった。時間の都合で3時間ほどの滞在だったが、愛好者にとっては一日過ごしても足らない施設であろう(牧野公園=2025.9.6/牧野植物園=2025.9.8)。 |