北見山地でぜひ登っておきたい山に、最高峰の天塩(てしお)岳がある。チトカニウシ山や渚滑(しょこつ)岳は標高があるものの、山域の北部と東部は低山が点在する地形が広がる。本州が梅雨の頃は、北海道では好天に恵まれることが比較的多い。そのため7月中旬を選んだが、今年は6月に西日本の梅雨が早々と明けて状況も一変。心配しながら出かけることになった。 天塩川上流へのアプローチは、名寄(なよろ)盆地の士別(しべつ)から行くと50キロメートル以上になる。石狩川流域の愛別(あいべつ)から峠を越えれば約40キロメートルで入山が可能だ。 登山口の天塩岳ヒュッテを早朝に出発し、川に沿って幅の広い作業道を進む。周辺のネマガリダケは3年ほど前から花が咲きはじめたという。林床は枯れ色が目立つ。 沢沿いの旧道分岐から前天塩岳の尾根に取り付くが、2回目の折り返し地点を過ぎると地形図の道を外して緩やかなトラバースがつづく。ルートは間違いないと思うものの、旧道へ接続するのではないかと危惧した。 1032m標高点近くから直登するようになって、地形図の道に戻った。篠地からハイマツ帯へ入ると、ガラガラの岩礫の間にコマクサが点々と咲いている。なかには白花もあり、どうも人の手で移植されたらしい。ここは本来の生息地でないと士別市の情報にあった。ほどなく、前天塩岳に登り着く。 いったん降って登り返すと天塩岳で、山頂直前にお花畑が広がっていた。霧に覆われる時間が増え、オホーツク海を望むことはできない。大雪山方面も隠れてしまった。 下山は新道を利用する。傾斜の緩い尾根で、歩きやすく行程がはかどる。標高1410m付近に「刀祢博遭難之碑」があった。側面には「秋深き……」と和歌が彫られているようだ。西天塩岳分岐と避難小屋を経て、円頂の円山(丸山=1433m)を越える。 標高1300m付近まで降りて来たとき、強い雨に突如見舞われた。まもなくダケカンバの樹林になったので、傘で対応するものの降り方が半端ない。気温が高く暑いので雨具を着るのは避けたいが、徐々に体が濡れてきた。やがて道が川のようになって、登山口近くの天塩川は濁り始める。篠突く雨に、付近の広葉樹林はより深山らしい趣を呈していた。首筋やズボンにダニが何匹も付き、車が来るまで濡れながらチェックを繰り返す(2025.7.16)。 |