探山訪谷[Tanzan Report]
space
space
space
space
 No.1058【雪舟が見た風景】
space
sesshu_1
space
space
依頼を受けた水墨画(一対)
space
space
space
space
space
tenkaitogaro_1
space
space
推定所在地の眺望(大分市美術館から)
space
space
space
space
space
tenkaitogaro_2
space
space
推定所在地の眺望比較(1)
space
space
space
space
space
tenkaitogaro_3
space
space
推定所在地の眺望比較(2)
space
space
space
space
 雪舟は、言わずと知れた室町時代の水墨画の巨匠である。「画聖(がせい)」とも呼ばれる。書画・骨董・古典籍を扱う知人から、「この絵の風景がどこを描いたものか検証してほしい」と依頼があった(「牛馬山水=春秋山水」 双幅 軸 絹本墨絵一部淡彩 92.3×50.5cm)。
 豊後(大分県)にあった天開図画楼(てんかいとがろう=画室)での作品だという。禅宗の僧であり、当時の中国(明)から帰国して文明8(1476)年前後は大分で暮らした(57歳頃)。同11(1479)年には山口へ戻ったらしいが、そこにも同名の画室があったという。
 これまでのイメージとして、荒っぽいタッチの絵巻物を想像していたが、この一対の絵は山水の表現ながらとても写実的でやわらかな印象を受ける。しかも瓢箪で区切られ、気に入っている景観をより強調する手法が使われている。写真で切り取ることと同じ効果がある。すばらしい作品で、ぜひとも真筆であってほしい。
 美術史や郷土史の研究者が、これまでに発表している天開図画楼の所在地はだいたい4ヶ所に絞られる。そこで、各推定所在地から見える風景を山座同定に使っているソフト( “Peak Finder”「スーパー地形」など)で描いてみた。
 「推定所在地の眺望比較(1)」は、3人のそれぞれの説に近い場所からの風景で、山の遠近や位置関係から描かれた場所の違いがわかる。「推定所在地の眺望比較(2)」は、2018年度に発表された調査・研究報告(雪舟の画室「豊後・天開図画楼」所在地考=長田弘通)に載る大分市大手町三丁目付近から、氏が推定されている山々を眺めたものである。
 これらを比較した結果、大分市美術館(大分市大字上野)付近から望む景観がもっとも作品に近いと思われた(描画の場所は左右で異なり、方角も違う)。あくまで、絵を描いた場所であり心象風景なので、天開図画楼の所在地を示しているわけではない。しかし、研究の進展に山座同定ソフトが役立つなら嬉しいし、山を楽しむ新たな要素が加わって私もおもしろい。刺激を受ける出来事だった。
space
space
 →「探山訪谷」へ戻る→ホーム(トップ)へ戻る
space