和櫛の背を連想させる櫛形(くしがた)山は、甲府市や南アルプスの3,000m峰から眺めると特徴ある大きな山容を示す。 甲府市内で泊まった翌朝に、富士川町平林(ひらばやし)から丸山林道と池ノ茶屋林道を利用して終点の登山口まで車を利用。櫛形山を縦走したのち、南尾根を氷室神社へ下って赤石温泉で宿泊する計画にした。 狭い林道を曲折しながら標高1,855mまで上がり、ネットで保護されたエリアに入る。桜峠で尾根に出ると、その先に眺望ポイントがあった。どこも雲に覆われ、南アルプスの巨峰群を望むことはできない。 三角点のある奥仙重(おくせんじゅう)から最高点を経てバラボタン平(祠平)にかけて、ダケカンバやカラマツの巨樹が並んでかつての風景を想い起こさせる。 裸山の手前にアヤメが咲き誇る平地があった。山頂北東側のアヤメ平(大平)が群生地として有名だが、裸山の方が多い印象を受ける。当初は唐松岳を往復して櫛形山の三角点峰三座の登頂を考えていたが、時間的な制約もあるので割愛した。 原生林につけられたコースを南尾根に向かい、ほこら小屋(祠頭)から植林地に出ると眺めがよくなる。期待していた富士山が雲の間に見えた。一帯はヤマオダマキが群生して気持ちのよい道だ。草刈りの作業中だが、お邪魔して通してもらう。作業道が分岐する箇所にはロープでルートを間違えないようにしてあり、登山道はきちんと維持されている。地域愛が感じられ来訪者を迎える心遣いも嬉しい。 尾根から北側の谷筋に入ると、氷室神社の境内に出た。拝殿と神楽殿がつながり、上部に本殿と樹齢1,200年の大杉が並ぶ。武田氏や徳川家康ゆかりの神社で鷹尾山と称す。御神木の幹周りは8.7m、高さは45mと説明板にあって周囲の社叢も美しい。隋神門から石段を降って平林の集落に入り、赤石温泉まで約4キロメートルを歩く。 翌朝は、温泉の建物を出て戸川左岸を上流へ向かう。渓流の先に落差約20mの妙蓮ノ滝があった。冬季は岩壁が氷花して龍が現れるらしい。周囲の岩壁はイワタバコが密生していた。宿に帰って露天風呂へ直行する(2025.7.4/妙蓮ノ滝=2025.7.5)。 |