六甲の西端=須磨の山手は、旗振山を中心に自然豊かな山なみがつづく。ウバメガシやヤマモモ・ヤマハゼなどが繁茂し、特徴的な景観を示す。これまで見事な樹林だと感じてきたが、宮内省の境界標石(「界標」)で事情が理解できた。神戸市須磨区の鉄拐(てっかい)山・青谷山・高倉山の三字にある官林230町が、明治23(1890)年に須磨御料地へ編入された。また、一ノ谷御料林はのちに神戸市へ払い下げられ、須磨浦公園の一部になっている。近くには皇室の別荘「武庫離宮」があり、戦後になって須磨離宮公園へ引き継がれた。このように、須磨・月見山一帯は別荘や保養所が並ぶ環境に恵まれた地域である。 須磨浦公園から六甲全山縦走路で旗振山へ登ると、海辺の景色が広がって気分も高まる。常緑樹に落葉樹が混じる尾根筋を鉄拐山まで進むと、縦走路の山々が北東方向に連なっていた。今朝方までの雨は上がったものの、六甲最高峰や淡路島方面は靄がかかったままである。かつて、高倉山があったトンネル上部から高倉台にいったん降りる。 栂尾山へ階段で登り返せば、再びウバメガシなどが目立ってくる。南東側の山麓が須磨離宮公園で、よい道が下っていた。横尾山から露岩を降ると馬ノ背につながり、ガレと険しい地形が核心部を示す。ちょっとルートを変えて、三点支持の動きなども確認した。 東山で今日の行程を振り返り、縦走路を外れて板宿(いたやど)八幡神社への尾根を降る。このコースも気持ちのよい樹林がつづき、「菅公の飛松」で知られる境内に降り立った。神社は上野山(得能山)に鎮座し、九州へ向かう菅原道真を板で囲って宿を提供したという。 季節を変え、何度も歩いている「須磨アルプス」を中心としたエリアだが、これまで知らなかった御料地が判明して六甲再発見の一日になった。歴史的にも興味深いので、あらためて探索したい(2025.2.16)。 |