『山旅倶楽部』の島の山旅で、伊勢湾の入口に位置する菅島へ出かけた。海女の島であり風が強いことでも知られる。周囲に点在する島々の中で最も標高の高い大山(おおやま)があるので、島の見どころをつないで一周する計画である。ほかに、標高200m級のサカデン山・ボシ山があるようだが位置は不明だ。採石でピークが無くなった可能性もある。 鳥羽から市営定期船で約15分。ちょっと海を渡っただけなのに、長閑な空気に包まれ気持ちが落ち着く。まず、大山をめざして林道を進む。集落を外れると、ヤマモモやウバメガシが目立ってきていい雰囲気だ。標高110mに山道の標識があって、急登をこなすと西側が大きく開けていた。足下は採石場で、橄欖(かんらん)岩を採っているらしい。地形の変貌は凄まじいが、志摩半島や鳥羽市街が指呼の間に望める。大きな山容は、伊勢神宮の背後に横たわる朝熊(あさま)山(朝熊ヶ岳)である。 東側へ回り込み山頂をめざす。山上一帯は紅ツゲの橙色や赤茶色の葉で埋め尽くされる。ツツジ類の葉も目立つ。頂上は樹林に囲まれていたものの、東へつづく稜線では再び眺望に恵まれた。航空機(自衛隊)の慰霊碑がある広場で昼食の休憩にする。ここには二基の石碑(C-1, 15号機/C-1, 9号機)があり、以前は一基が別の場所にあったらしい。標識の絵図には元の位置(採石場上部の標高130m付近)が示されていた。 大きな木が混じる自然林になると、宮内省の境界標石に沿った山道となる。登り降りを繰り返し、集落とおんま浜をつなぐ道との交点(峠)に題目石が立っていた。時間があるので、黒崎(長崎鼻)まで往復する。両側には、畑や家屋・小屋があったと思われる平坦地と、廃棄された道具類が散らばる。浜へ下りる高台に鳥居だけが残る神社跡があった。さらに先へ進んで岬の岩場に出る。あす行く予定の神島や菅島灯台がより近くになった。 先ほどの交点(峠)まで引き返し、近くの役行者像を拝してから白浜山に向かう。頂上には監的哨(かんてきしょう)の建物があり、その屋上に四等三角点(点名=白浜)が認められた。付近の海域が試砲場で、第二次大戦中に伊良湖から発射された砲弾の着弾点を観測した施設である。 菅島灯台は日本最古の西洋式灯台〔明治6(1873)年〕。煉瓦造りの白い建物は、周りのスイセンとよくマッチしていた。最後に白髭神社(菅島の守り神)へ立ち寄ってから港へ戻る(2025.2.1)。 |