霊仙山と御池岳の間にあって、三国岳は目立たない存在だ。だが、近くに保月・五僧・時山をつなぐ古道が通り、なにより滋賀・岐阜・三重の県境に位置する重要な山である。しかも鈴鹿山脈の主稜を構成し、アップダウンが大きいので登山の観点からも外すことができないエリアといえよう。 近江・美濃・伊勢を分かつピークは894m。西側にある三等三角点(点名=阿惣)は815.0m。最高点は南側の911mである。鞍掛峠の近くに焼尾山があって922mの標高を誇る。 多賀町の大君ヶ畑(おじがはた)から鞍掛峠に向かう国道(306号)を歩き、鳴川谷に入って途中から三国岳西尾根に取り付く。三角点ピークを経て三県境と最高地点から主稜を南下し、焼尾山を往復したあと「奥山」(等高線=780m)を経て百々女鬼(どどめき)橋に下山するコースを予定した。 三国岳西尾根には、鳴川谷中流の植林地から作業道を登る。急斜面を折り返しながら714m標高点の東側にある鞍部に出ると、その先に三角点ピークが尖る。手前に高圧送電線が通っているため展望がよい。御池岳や霊仙山が近い。遠く比叡山も姿を見せていた。北側斜面をトラバースして稜線に達し、折り返すようにピークへ登る。三国境では、伊吹山をはじめ奥美濃の山々が視野いっぱいに散らばっていた。東面からは、養老山地の彼方に恵那山の大きな山容も確認できる。 最高峰から150m以上の下りがあり、再び登り返して焼尾山の肩に着く。主稜から外れ、東側の頂上をめざす。藤原岳が間近に望め、木曽三川の河口も見下ろすことができた。 「奥山」の尾根に入れば、周囲は落葉広葉樹の林が広がる。794m標高点を過ぎると植林地が現れた。ただ、細い尾根上はシャクナゲが密生する区間もあり、斜面をトラバースする方が歩きやすい。葉を落とした樹木とアセビの緑が美しいコントラストを見せる。送電線の鉄塔からは、作業道を利用して国道に降りた。 大君ヶ畑は君ヶ畑(東近江市)と並ぶ木地師の里。白山神社にある惟喬(これたか)親王の石碑を訪ねる(2024.12.13)。 |