大雪山(Da Xue Shan)北部にある亜拉雪山(Ya La Xue Shan,)は、カム地方のチベット族にとって大きな存在感のある山だ。実際の標高ではミニヤ‐コンカに及ばないが、かつては「ジャラ」(ザラ)を第一にあげる人が多かったという。
これまで、日本語訳の山名は「ジャラ」(Jya-ra)とされてきたが、最近では中国語の影響からか「ヤラ」(Yala)と表記されることが増えてきた。本来の発音が不明なためすぐに結論は出せないが、無気音の“j”は非常に弱い音であり、漢語表記が優占する結果を生んでいる。
少数民族が住む地域の地名には、そこを居住域とする民族の言語を、できるだけその音に近い形で表記すべきだと考える。だが、行政や地位を利用した一元化は、これからもますます進行するだろう。
漢語表記の地名を見たとき、私たちは漢字の意味から理解しようとするのでなく、基本的に音だけをまねて使うようにしなければならない(もちろん、意味から訳されたものもある)。それとて、かなり中国語の癖を含んだ音である。もっと世界に通用する方法はないのだろうか。漢語に換える際の基準や方法論もよくわからない。言語学の専門家などは、こうした現象をどう捉えているのか、ぜひ教えてほしい事柄である。
また、英語や他国語で使われたり置き換えらえた固有名詞も、そのまま鵜呑みにすると間違いをおこしてしまう。たとえば、1932年にミニヤ‐コンカへ初登頂したアメリカ隊の記録に4人の名前が出ている(“MEN AGAINST THE CLOUDS”)。その中の「ヤング」(Young)という名前は、中国系アメリカ人(ハワイ生まれ、広東育ち)で、日本語なら「ヤン」(Yang)さんでよいはずだ。 |